エッセンス

ひとつきぶりくらいに会った M が、年末にかけて東京に就職するという話をしていた。聞いたときはああそうかと軽く流していたのだけど、うちに帰ってあらためて反芻してみると、社会人になってからの節目というのは思わぬところでやってくるのだなと思った。
人と出会った時というのは、なぜか無条件に、これからいつでも会えて、食事をしたり、お酒を飲んだり、おしゃべりしたりできるのだという錯覚を起こしてしまう。それでも学生時代であれば、3 年や 4 年といった節目が目に見える形でやってくるので、別れというものはあるていど自分の中で合理化することができる。が、社会人ともなると、節目はこんなに突然やってくるので、少し混乱してそして感傷的になってしまう。
今日あらためて M の実家がある、とある地方の話を聞くと、「よくこんなところまでやって来たねえ」と思わず口をついて出てしまった。反芻している今でもそう思う。ただ、落ち着いて考えてみると、だれのたよりもなくこんな土地に来ることはないだろうから、やっぱりアテにできるだれかがいたこの土地に、今はいるのだと思う。東京へも、そうしたアテがあって行くのかも知れない。
自分はずっと関西圏におり住む土地を転々としたことがないので、こうやって人生を生き抜いてきた M の軌跡を考えると、なんだか切なく、ちょっといとおしいような気持ちになってしまう。