歯切れオヤジ

2006-1-11 wed. @ジョードプルジャイサルメール

(この旅日記、必ずしも日付順じゃありません。目次は日付順に並んでいます)
デリー〜ジャイサルメール行きを列車を取り損ねたことから、いったんジョードプルまで移動してきた。ここからならジャイサルメール行きの列車もバスもある。来てから気付いたのだけど、湖がきれいとガイドに書いてあったプシュカル行きのバスも、ここジョードプルから乗れるようだった。プシュカルに列車で行くには、アジメールで乗り換える必要があるようで若干めんどくさい。どうやらラジャスターン一帯を移動するには、列車よりバスのほうが便利らしかった。
昨日宿のご主人に、ジョードプルの街の西にあるジャイサルメール行きのバススタンドまでのオートリクシャの値段をたずねたところ、30ルピーとのことだった。だが、時計塔市場前でつかまったオートのオヤジたちは50ルピーだと吹っかけてくる。「4〜5キロくらいあるから、50ルピーだ」という。1キロ10ルピーという計算らしい。朝のバタバタした時なのであまり時間を取る余裕もなく、40ルピーで折り合いをつけることにした。結局バススタンドまで、オヤジたちが言ってたように(目分量ではあるが)4〜5キロほどあった模様で、40ルピーくらいが妥当なのかなと思って金を払うと、リクシャのオヤジはやたら嬉しそうにしている。やはり30ルピーくらいが相場だったようだ。最近は料金交渉がわずらわしく、いつも相場の3〜5割増しで乗ってるのではないかという気がしないではない。
バスストップの待合室で、やけに元気で言葉の歯切れが良いオヤジが話しかけてきた。「どこから来たのだッ!」「名前はッ!」「結婚してるのかッ!」のように、語尾に必ず小さい「ッ」と感嘆符が付くようなしゃべり方をするのだ。
「オレもジャイサルメールに行くのだッ! 宿は決まってるのかッ?」「オレの友達がやっている宿がある。見るだけ見ていけッ!」「フォート(お城)の中の宿は高いぞッ!」「オレはもう結婚してるぞッ! 子供も2人。息子と娘がいるッ!」「オレの村はジャイサルメールよりさらに向こうにある、パキスタンとの国境の街だッ!」「バス代いくら払ったッ? 150ルピー?高いなッ!」「オレは100ルピーだぞッ! コミッション取るにしても10とか15とかだろうッ!」「タバコ吸うかッ! 吸わないッ?? オレは大好きだぞッ!」「インドの年寄りはこんなふうに吸うのだッ!」── ざっとこんな感じだった。
元気なオヤジで、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。しかしそれが全然苦にならない。「友達がやっている宿」とやらを勧められたときも、ひねこびた態度ではなくカラッとした言い草ですがすがしい。日本にいると「国境の村」というのはまったく想像がつかないが、このオヤジ(歯切れオヤジと呼ぶことにした)のおかげで少し想像力を伸ばせた気もする。「インドの年寄りのタバコの吸い方」というのもおもしろく、手をグーにして中指と薬指の間にタバコをはさみ、輪っかになっている親指と人差し指の間から吸う仕草を見せてくれたりした。
バスに乗ってからも、バス後部のトランクに荷物を入れるとエクストラチャージを取られるので座席上部の寝台部分に載せておけばいいということを教えてくれたり、休憩時間が来ると「ゲンキかッ?」と気を遣ってくれたりする優しい親父だった。ジャイサルメールに着いて、例の「友達の宿(フォートの外にある)」を見せてくれた後に「やっぱりフォート内のも見比べてから決める」と言っても、それほど気にする素振りを見せなかった。ただし、バススタンドから宿までのリクシャ代は払わされたのだけど。
バスは、今回の旅の中で一番良いものだった。まず、バス自体が快適だった。1+2の3列しかなく、座席の横幅に余裕があった。また、座席の上部に仕切りつきの寝台もあり、望めば(=金を出せば)横になりながら移動することも可能なようだった。ただし、ローカルバスほどではないもののポイントポイントで客を乗せたり降ろしたりするため、シートにあぶれた者たちが(無断で)寝台に登り、共有して使っているようだった。
歯切れオヤジが言うには、このバスの車体がまだ走り始めて1ヶ月しか経ってないのだそうだ。どおりでキレイなのだが、やはりそこはインド人。シゴトが雑で、窓の留め金の建てつけが悪く「バウンドするたびに自動的にちょっとずつ開いていく」仕様になっていた。んもう!
ジャイサルメールのフォート内に着くと、怪しげな日本語を操るインド人が「ワンナイト、30ルピーネ」などと言って客引きをしてきた。歯切れオヤジと打って変わって粘着質のインド人だ。はじめに連れて行かれたのがカルカッタGH、30ルピー。「安かろう悪かろう」を地で行くGHで、速攻で断る。見てみようと思っていた、イシャーパレスGHにも連れて行ってもらった。しかし、ここも「安かろう悪かろう」。
どうもフォート内のGHは、古いことと「フォート内にある」ということだけをウリにしているところが多いようで、どうしても狭くて汚いところが多い。もう汚いトコはイヤなの!ちょっとくらいはお金持って来てるから、トイレバス付き・24時間ホットシャワーの出る清潔なところがいいの!!これじゃ歯切れオヤジに紹介してもらったフォート外のGHの方が良かったよと、フォート外に戻ろうとしたとき、ふと、サガール(SAGAR)GHというGHが目に入った。中を見せてもらうと・・・これこれ!あるじゃないか!!ちゃんとしたキレイな部屋が!!
結局このサガールGHに宿を決めたのだけど、あとからよくよく見てみると、ガネーシャGHやパラダイスGHなど、外観からしてキレイそうなGHがいくつもあった。おそらくキレイなGHを探すときのポイントは、「ペイントじゃない金属製やエンボスのついた凝った看板がある」というところではないかと思われる。
宿探しの途中、昨日ジョードプルのメヘランガル砦への道で会った日本人の女の子に会った。ジョードプルでは「昨日着いて1泊したので、今晩ジャイサルメールに向かおうと思うんです」と言っていたが、今日は「今朝着いてジャイサルメールはだいたい見たので、今晩また移動しようと思います」と言っていた。車中2連泊とは、よくやる。きっと若いのだろう。バラナシ〜ポカラのバスでかなりダメージを受けた僕にはできない芸当だ。さっきは「ラジャスターンではバスが便利なのかもしれない」というようなことを書いたけど、正直バスはもう乗りたくない。
ジョードプルは騒がしいぞッ!ジャイサルメールは小さくて静かないい街だッ!」とは歯切れオヤジの弁だが、まったくその通りだった。あまり車も通らず、人通りもそこまで多くない。土産物屋の中には、キャメルレザー(ラクダの革)製の帽子やカバンなどを扱っている店もあり、多少なりとも砂漠を感じさせる土地だった(実際は砂漠地帯というより、荒れ地といった方がしっくりくる感じだったけど)。
屋台で遅い昼食を摂る。初めてのマサラドーサ。鉄板の上にクレープ様の生地を広げ、具としてマサラをまぶしたジャガイモをひらべったく敷く。さらに刻んだ玉ねぎと香草(僕は断ったが)をふりかけてしばらく熱した後、何度か巻き、ひらべったい棒状にたたむ。インド人相手なら、2種類の汁物の入ったカップとともに平棒状のクレープをそのまま皿に載せる。屋台のオヤジさんは僕を外国人と見て取ったのか、平棒クレープを金コテで食べやすいサイズに切ってくれた。2種類の汁物のうち、ひとつはトマトの入った少しスパイシーなカレー様のもの。もうひとつは白っぽいなんだかよくわからないが旨い汁だった。マサラドーサ、ハッキリ言って旨かった。じつはこの直前に、オムレツサンドを食べていたのだけど、比較にならないくらい旨かった。クレープはひとつだけだけど、汁物は足りなくなったら注ぎ足してくれる。これで10ルピー。南インドの料理らしいが、今度来るなら南インドを回ってみたい、と思わせるほどだった。
その後、ガディサール湖を見に行ったがあまりピンと来ない。人工の湖といったかんじだった。夕日を見に、フォートの展望台に登ったりもする。展望台に来ているのはほとんどが外国人。なかなか夕日の写真がうまく摂れない。光量が多すぎるのだ。でも絞りすぎるとそれもまたうまくいかない。
宿に戻りシャワーを浴びる。案の定、15分くらい経つと湯の温度が下がってくる。シャワーのお湯を心置きなく使うなんて芸当、インドでは叶わないのだろうか。
それにしても、歯切れオヤジと話すのはとても楽しかった。僕の名前を覚えてからは「マサキッ!ゲンキカッ?」というのだけど、全然嫌な感じがしない。愛嬌と懐の深さを感じた。濃い顔してるけど。

本日の出費

10000 円 = Rs 3750 で両替。(Rs 1 = 約 2.7 円)

内容 値段
オートリクシャ(時計台〜バス停) Rs 40
チャイ2杯 Rs 9 (4+5)
オートリクシャ(バス停〜歯切れオヤジ紹介の宿) Rs 10
バナナラッシー Rs 13
オムレツサンド Rs 12
マサラドーサ Rs 10
コルネ Rs 5
マサラミルク? Rs 5
7up(缶) Rs 35
宿(SAGAR GH) Rs 170
合計 Rs 309