PS2のボタン名

PS2コントローラ - AmazonへPS2の(PS1の時代からだけど)主要4ボタンは◯△×□と名付けられている。ユーザビリティというのかな、この点から見ると、この名付け方はちょっと難アリと言わざるを得ない。

人間は、ある対象(モノ)に名前があるなら、その名前を頭の中で反芻する事によってその対象を認識する(と僕は思っている)。また、脳は自分の生活を一番円滑に進ませるようにカスタマイズされている(とやはり僕は思っている)。たとえば、日本人が犬を見たら、「あ、ドッグだ」と思わずに「あ、犬だ」と思う。思った結果犬を見たという記憶が残る。これが何度も繰り返されることによって、犬という概念には「ドッグ」という単語よりも「犬」という単語に、強く結びつけられるのだ。

このことを考えると、◯△×□というボタンの名前は、たとえば他のコントローラーでよく使われるABXYというボタンの名前と比べて難アリだなあと思うのだ。

つまり、◯というシンボルを認識するのに、僕らは「まる」という名前を思い浮かべなければならない。Aというシンボルを認識するときに必要な「えー」という名前を思い浮かべるのと、どちらの負荷が大きいだろうか。僕らの生活の中でよく出現するのは「まる」という名前の「◯」というシンボルだろうか、「えー」という名前の「A」というシンボルだろうか。

犬は犬だとすぐわかるけど、カワウソはカワウソかラッコか見分けが付かないということだ。「脳がカスタマイズされてる」なんてカッコ付けて言ったが、要は馴染みが有るか無いかということだ。

さらに、ボタンは、キャラクターにパンチさせたりジャンプさせたりといった、なにかしらの機能を持っている。相対的に馴染みの無いシンボルがどの機能を持っているのか、それを想起させる負荷は高そうだ。△が「さんかく」だと認識した上で、そのボタンの機能は?とたどる過程で、やはり△が「さんかく」と認識する作業が必要になってしまう。△は「さんかく」だけど、それ以上にBは「びー」なのだ。カワウソが「カワウソ」である以上に犬は「犬」なのだ。

「難アリだなあ」と思う理由はまだある。

◯△×□とABXYの決定的な差を考えるといい。それは順序だ。

アルファベットには順序があるが、◯や△といった記号に順序はない。だから、Aボタンのとなり(右下かもしれない)にBボタンがあることは容易に想像できるのだけど、◯ボタンのとなりにあるのは何ボタンなのかはよくわからない。シンボルに順序が定義されていれば、その連想からとなりのボタンが何ボタンなのか想像が付く。

◯のとなりにあるべき記号は?という質問に答える一般的な合意はない。この質問自体ナンセンスなのかもしれないのだけど、じゃあなんでナンセンスなボタン名を付けるんだよ!!ほんとに(苦笑)。

あまり◯△×□を責めても何なので少しフォローしておくと、ABXYより◯△×□の方が馴染みのある人もいるということだろう。たとえば幼稚園児とか小学生とか。◯や△といったプリミティヴな記号は、そういう世代を相手にする場合は便利だ。・・・ただ、PS1が発売された頃のターゲットは高校生や大学生あたりだったということだから、この理屈はちょっと通らないかもしれない。まあどっちでもいいけど。

で、もうひとつツッコムと、人差し指で押す背表紙のボタンはしっかりL1とかR2とかって名付けられている。Lは◎より馴染みがあって、なおかつ左を想起しやすいし、Rは☆より馴染みがあって、なおかつ右を想起しやすい。わかってんじゃんよ。なのになんで◯△×□なの? だったらついでにLRを◎☆にしといてくれればよかったのに。

任天堂のコントローラーにツッコムとすればZボタン(N64の時はZトリガーと言っていた。トリガーって何だよ)かな。Zはシンボルとしては馴染みはあるけど「ぜっと」って言いにくいのだ。言いにくいと認識の時に負荷がかかる。上の主張の繰り返しになるが、負荷のかかるボタン名は止めて頂きたい。ていうかこれ以上ボタンを増やすな。

とまあ、いろいろ書いて来たけど、「慣れなさい」と言われればそれまでです。だから言わないでください。