トる

久しぶりにMと会って食事をした。
Mの妹さんは病棟で看護婦さんをしていて、ヘヴィな病気の患者さんになると夜中になくなったりするらしい。この、「最期に立ち会い、綿を詰め、体を清め、葬儀屋の手配をすること」を、業界用語で「トる」というらしい。たぶん「看取る」からきてるのだと思う。
患者さんがお亡くなりになると、医師が臨終を告げ、しばらくご家族だけにし、その後綿詰め、清め、葬儀屋の手配と続く。危険な状態の患者さんは、あらかじめナースセンターに近い個室にあてがわれるので、「ご家族だけにする」というのも可能となる。最近は、綿詰めや体の清めは、ご家族にいっしょにやるかどうかを聞くようになったのだそうだ(以前までは看護士だけでやっていたらしい)。
これを聞いたぼくは、看護士とはかくも重いしごとなのかと、かなりショックを受けてしまった。ぼくが入院していた病棟は、死に直結するようなヘヴィな患者さんはいなかったので、夜中にナースコールがあったとしても「小便が出た」とかそういうたぐいの、まあかわいらしいことしかなかった。(それだけでも十分大変だと思うのだけど)
M自身も看護士の資格をもっているのだが、そんな妹さんの「トった」話を聞くたびに「病棟看護は無理だなぁ」と思うのだそうだ。