初陣

魚ゲット!

一夜明け、朝早くにレンタカーを借りて舞鶴まで出陣。メンバーは昨日の彼(Tくん)とその彼女、そしてもうひとり別の同期の男の子(Hくん)の計 4 人。エポキシの固まった銛を持ってきてくれた T くんの姿は一種異様。でもカッコ良かった!!
京都縦貫道路、国道 9 号、舞鶴若狭自動車道を経て、舞鶴へ。岸には自衛隊の軍艦が停泊していてギョッとする。
さらに進むと舞鶴引揚記念館というのがあった。林芙美子の「浮雲」の冒頭をついつい思い出した。

 なるべく、夜更けに着く汽車を選びたいと、三日間の收容所を出ると、わざと、敦賀の町で、一日ぶらぶらしてゐた。六十人餘りの女達とは收容所で別れて、税關の倉庫に近い、荒物屋兼お休み處といつた、家をみつけて、そこで獨りになつて、ゆき子は、久しぶりに故國の疊に寢轉ぶことが出來た。

さて、さらに車を進め日本海を目指す。峠を越えて現れた海に、みんな歓声をあげた。小島が数個浮んでいる。僕たちは初陣をアンジャン島近くの入り江と定めた。雨がぱらついていたが、意外なほど水は透明で、魚影も小さいながらそこかしこに見える。
さっそく潜った T くんはあっという間にカワハギを捕らえていた。エポキシの固まり具合も文句なしのようだ。自分も海に入る。水深 50 cm ほどのところでも魚がいる。カワハギやベラが主だ。2-3 m のところに行くと、アジの群れの回遊を見ることもできた。
休憩しつつ 3 〜 4 時間も潜っただろうか、初めはまったく捕らえられなかった自分も 2 尾、10 cm たらずのカワハギを突くことに成功。カワハギはバカな魚で、自ら銛先に寄ってくる。カワハギが銛に興味を無くして明後日を向いたとき、あるいはハナからカワハギの側面に向かって近づいてドテッ腹が見えたとき、ズドンと銛を放ってやると、ステンレスの串が腹にぶっ刺さるという寸法だ。カワハギは側面の面積が広く、初心者の的としては最適。今度も、まずはコイツから狙って行こうと思う。
晩 T くん宅に戻り宴を開いた。まず、カワハギを捌くところから始まる。カワハギはその名の通り、眉間に包丁で切れ目を入れれば、あとは手だけで簡単に皮を剥くことができる。内臓を捨て、肝だけ取り出し、腹身だけ刺身に、残りは味噌汁の出汁にした。
カワハギの刺身は最高に美味かった。刺身に肝を少量のせ、醤油と少しのわさびでいただく。プリプリして、甘くて、上品な味わいだ。味噌汁も滅茶苦茶に美味い。よくテレビで「捕った魚をぶつ切りにして鍋に入れる」という絵を見るたびに、本当に美味しいのか?と訝っていたのだけど、これは本当に美味かった。出汁の美味さもさることながら、わずかに骨に残っていた肉もうまかった。鍋にしても絶品だろうと思う。
カワハギという魚は口がおちょぼ口なので、釣りではあまり捕れない魚らしい。しかし銛で突いてやると、初心者でも捕ることができる。それがコレだけ美味いのだから、これから何度でも潜りに行くと心に誓った。