ちょっと待って、神様 (5)

最終週。
竜子(泉ピン子)は夫や子供たちの思いやりに愛情を感じる一方、親の離婚に直面し、生きていく自信を無くす秋日子(宮崎あおい)。そんな秋日子に竜子は語りかけるのだ。

うらやましいと思う程くやしかったら、あなたの自分の人生、生きてみなさい。
いろんなことやってみなさい。恋もしなさい。結婚もしなさい。子供もつくりなさい。やれることはなんでもやってみなさい。
人生、どんな味がするものか。苦いもの、甘いもの、しょっぱいもの。精いっぱい味わってみなさい。
生きていて損することなんか何一つない。生きなさい、秋日子。

竜子が現世に舞い戻った直後には感じ得なかった家族の愛情。わずかひと月の間に、家族の愛情を取り戻した竜子をそばでずっと見ていた秋日子。「辛い時は、目をつぶって大きく深呼吸するの。そうすると生きる勇気が出て来る」。カラ元気かもしれない。だけど、カラ元気も元気だ。なんでもないような、こんな小さなことが、人生を生き抜いていく上で、とても大事なことなのかもしれない。
別れの夜。正体のばれた竜子は、一夫(津嘉山正種)にいう。

人が生きていくって、いろんな人に出会ったり、ものに出会ったりして変わっていくものでしょ。
人って、人生って、いろんな可能性に溢れてるのよね。このひと月で、新しい目で人生見直したら、人生って素晴らしい。あたしが思ってたより、ずっとずっと人生って素晴らしい。
だからお父さん、あたしのために人生せまくしないで。

これを聞きながら、秋日子はにっこりと微笑む。人生にはこんな夫婦の愛の形もあるということを、胸の奥に刻みつけたことだろう。
最後の夜明け。一夫と竜子が抱きしめあい、別れを惜しむシーン。一夫は、竜子が天上に帰り、秋日子に身体を返さなければならないことは十二分に知っている。それでも出てしまう「このままでいよう。行かないでくれ」の言葉。それがどんなにエゴイスティックな感情であるのかも、一夫はわかった上で言っているのだ。見ていて辛いシーンだった。
覚悟を決める竜子と秋日子。入れ替わりの儀式を進めるふたりは、とてもいい顔をしていた。
ラストのシーン。春になり、一夫とリサがついにマレーシアへ旅立つ。秋日子は髪型が変わり、「秋日子」に戻っていた。結局、春夫(塚本高史)やリサには本当のことは語らずに去った竜子は、天上から彼らを見守り続けるのだった。
とてもいいドラマだった。今クールのドラマで、草薙剛主演の「僕と彼女と彼女の生きる道」も、家族だとか人生だとかをテーマとする点で似たドラマなのだが、草薙くんがボクトツとしすぎていてどうものめり込めない。やっぱり宮崎あおい泉ピン子塚本高史津嘉山正種みんなうまい。宮崎あおいのモノローグもはまっていたし。この人、「パコダテ人」(id:masaking:20031111)の時もそうだったけど、健気な役がはまる人だ。
映像的にも、秋日子と竜子が木の影を通りすぎる一瞬で入れ替わったり、思い出と現実のシーンがシームレスにつながれていたりしておもしろい趣向だった。

ちょっと待って、神様
http://www.nhk.or.jp/drama/archives/matte/
(URLが変わったみたいです)